3週間に一度の診察日。

離婚についてまた動き出すことを報告した。
医師は浮かない顔で、私の話を聞いた。
初診から2年以上経つ。

「またなんで、困難なことを始めるのかな・・・
せっかく楽になってきたのにね。」

というような趣旨の言葉をかけられた。

私としても、本当はやりたくないのかも。
でも、何としても離婚を遂げたい。

「なんで離婚にこだわっているの」
というような流れで・・・

「それは再婚して、明るい家庭を築きたいからです。」
と答えた。

「う~ん。
あなたの離婚に同意しない相手(要するに元夫のこと)
のこれまでのあなたからの話を聞いた限りで察すると
長引くと思うんだけどなぁ

あなたが、離婚にこだわり続けてこうやって辛いのは
相手にコントロール権を渡してしまっていることじゃ
ないかな。支配されているとあなたが感じてしまうように」

回転椅子をくるりと横向きに回して、組んだ脚に
これまた組んだ両手をのせた。

「別居してから10年経つんだし、新しいパートナーを
見つけて事実婚みたく明るく暮らせていけると良い
んじゃない?」

珍しく矢継ぎ早に言葉を紡いでいく医師の風貌を
ぼんやり眺めていた私だが、何とか気持ちを考えを
わかってもらえるように素早く頭の中で言葉を組み立てる。

「先生、私はそういうのはどうも落ちつかないんです。
事実婚というのとかは・・・
いろんなことが、すっきりと収まりたいって思っちゃう
んです。どうしても・・・クヨクヨ考えちゃうんです。

それに事実婚なら、去年に解消しました。」

医師は驚いていた。

「え。そうなの。もうしてたんだね。
立ち入ったこと訊くけど、なんで別れたの?」

単刀直入に聞かれて

「性格の不一致です。」
と事実を述べた。

私と家人は、まさに性格が合わなかった。それだけ。

すると医師はしたり顔で

「逆転の発想で、離婚できないことを利用するといっちゃ
おかしいけど、それがあるからこそ誰かと付き合ったとき
結婚せずに別れたいときに手続きを経ずに別れられると
いうメリットもあるんじゃない?

それに、あなたは離婚して付き合わないと相手の人に
悪いって負い目を感じるようだけど、それでも包み込んで
くれるような相手じゃないと愛情は本物じゃないんじゃない?
ふるいにかけるようなものとして、考え方を変えるとかは?」

そんなことを言っていた。

けれど私は、神経質というか潔癖というか生真面目というか
まあそんな類の性格なので、どうしても離婚してきちんと
法律婚をしたいと考えているタイプの人間だ。

それを切々と言葉を手繰り寄せつつ切々と訴えるうちに
医師も苦笑して

「まあ、それ(離婚)があなたの人生の目的になっているんだね。
戦うということが。困難に立ち向かうということが。」

私も苦笑い。

「そうですね。。本当はこんはずじゃなかった人生ですけど
私にとっての目的が離婚となってしまってますね。
このままだと私は、自分の人生を損なわれた感覚のまま
社会から隔絶されたような隠れた存在の気がしてしまうんです。
自分の人生を生きていないような、喪われているような・・・

とにかく何も進まないより、試練が待っているとわかってても
這い進むことが重要なんです。相手と縁を断ち切りたい。
それだけなんです。

重要なんです。私にとって。人生にとって。」

「今となったら、もし離婚できた暁には悲願の達成という
ことでお祝いすることをイメージしています。
そのことを考えるだけで気持ちがわくわくします。」

というと、笑われてしまった。
確かに・・・
離婚するのにこんなに苦労する女はそういないだろう。
おまけに子供とも生き別れだしね。

結局、寝つきが悪いのと時々落ち着かない気分の時用の薬を
処方してもらって診察室をあとにした。

あ~あ。
せっかく減薬して漢方薬のみになったというのにね。
何も自分からまた辛くなることないのに。
わかっているけど、苦労性なのかな。







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