2010年8月の読書メーター
2010年8月31日 読書読んだ本の数:6冊
読んだページ数:3069ページ
■ザ・スタンド(下)
マザー・アバゲイル=母性=自然=直観=非合理=善(白い力)を代表するのに対して、ランドル・フラッグは父性=文明=理性=合理=悪(黒い力)を表している。その対照が後半にはファンタジックな如実さでくっきりと明確化されたところが、素晴らしいと思いました。その相反するコミュニティに集う人物たちのキャラの描き方が興味深く、それぞれの人間味と善悪に対する考え方の違いに好みが分かれました。どの人物が一番自分に近いのかな・・と想像するのも余韻を楽しめて良かったです。大長編でしたがあっという間の数日間でした。傑作です。
読了日:08月27日 著者:スティーヴン・キング
■ゴールデンスランバー
青柳雅春がなぜこの犯人に仕立てられたのかが、わからなかったので(イケメンだから?アイドルを助けた有名人だから?)この理不尽さに憤りや戸惑い、果ては悲哀まで感じさせながら必死に逃げる姿にハラハラさせられました。かつての恋人や、かつての同僚、かつて知り合った人々にあらゆる場面で助けられ「もういまはない、懐かしい場所」をゴールデンスランバーの歌になぞらえて事が進んでいく辺りが切なくて、そのために本当に失ってしまうことに悲しみを覚えました。女性キャラの心理がちょっと共感しにくいのを除いて、満足です。
読了日:08月25日 著者:伊坂 幸太郎
■ザ・スタンド(上)
キャプテン・トリップスが世界中を蔓延し、一気に人々を死に至らしめる恐ろしい感染症の後、生き残った人々たちがどうやって生き延びるのかに関心を寄せて読み始めました。一人一人のストーリーが丁寧に描かれているので、それぞれの短編が書けるんじゃないかと思うくらい読み込めました。世界の破滅後に人々は文明利器を失っても希望を失わずに再建への道を目指して、善と悪の岐路に立ちます。そこで、どの道を選ぶかが運命の分かれ道。選ぶ余地もない人物もいますが、このストーリーには善悪ペアになっているキャラクターがいるので考えるのも良い
読了日:08月23日 著者:スティーヴン・キング
■ザ・ロード
守るべき子供がいなければこの父親も、母親と同じように全てを自らの手で放棄していたのかもしれない。遅かれ早かれ世界が終ってしまった後明らかに希望がない重く厳しい状況でも、食べ、飲み、護り、ひたすら歩き続けていかなければ、死んでしまう。子供が聞いた「最終目標は?」と父親に対する問いが胸に重苦しく残りました。人は、どんな道でも立ち止まらない限り目の前に伸びている道をひたすら創意工夫しながら善の気持ちを失わないように用心しながら進まなければたどり着けないのでしょうか。父親と息子の道の先にあるものは・・・
読了日:08月12日 著者:コーマック・マッカーシー
■白の闇 新装版
突然失明してしまうという伝染性の失明症が、急速に広がっていく。人々のパニックがリアルに伝わってくる。とても怖くて不気味な白い闇の世界で混沌とした世界が顕かになっていく。見えないということがこれほど人を絶望させ、失われていく文明社会の中で人間らしい暮らしかたができなくなることの悲惨さに読むのをやめられませんでした。名前のない登場人物と会話文の記号がない文章でしたが、慣れてしまうと読みやすく一段と物語の中へ没頭していきました。目の見えない人々の中でたった一人だけ見えるという現実を持った医者の妻の精神力に脱帽。
読了日:08月11日 著者:ジョゼ・サラマーゴ
■渚にて【新版】 人類最後の日 (創元SF文庫)
数ヵ月後にやってくる放射能にて人生が終わるという状況の中で、人はどう生きていくのかとても興味深く読み終えました。全体的なトーンは暗く重いなままだけど、登場人物のピーター夫妻と赤ちゃん、絶望的な気持ちを飲むことでしか晴らせないモイラ、スコーピオン号潜水艦艦長のドワイト・タワーズ、ほかにも個性的な人物描写で浮き彫りになっていく不自由な日常が印象的でした。特に、モイラとタワーズ艦長との関係のせつなさや真実となかなか向き合えないメアリーを忍耐強く支えるピーター将校の心の交流が誠実で清々しかったです。
読了日:08月10日 著者:ネヴィル・シュート
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